ホームページ制作の見積書はどこを見る?金額より先に作業範囲をそろえる
公開日: 執筆:佐藤
ホームページ制作の見積もりは、総額より先に作業範囲をそろえて比較します。二つの見積書に同じ作業名があっても、誰が何を用意し、どこまで行えば完了するのかが違えば、同じ条件の金額ではありません。
見積書が届いたら、各社の項目を横に並べるだけではなく、一つの作業を一行とする比較表へ写し替えます。「含む」「依頼者が行う」「含まない」「記載なし」の四つに分けると、金額差より先に確認すべき違いが見えます。
ここでは、予算額の決め方や、制作会社の一般的な選び方は扱いません。複数の見積書が手元にある状態から、比較できる条件へ直す作業に絞ります。
「一式」と「何ページ」を、そのまま比べない
見積書には、「ホームページ制作一式」「デザイン・制作」「全六ページ」などの表現が使われることがあります。しかし、名称やページ数だけでは、原稿作成、写真加工、確認、公開作業が含まれるか分かりません。
独立行政法人情報処理推進機構の『ソフトウェア開発見積りガイドブック』は、利用者と開発者が異なる範囲を見ていると、見積もりの根拠を共有できないと説明しています。最初に成果物と作業の対象範囲をそろえ、各作業の担当を明らかにする考え方も示しています。
この資料が扱うのは、システムとソフトウェアの開発です。会社ホームページの標準的な見積書や料金相場を示す資料ではありません。本稿では、金額を比べる前に、対象と担当をそろえるという考え方だけを参考にします。
二つの見積書を、一枚の表へ写し替える
ここからは、比較方法を説明するための仮例です。制作会社Aと制作会社B、見積書の内容、ページ数、修正回数は、すべて説明用に設定したものであり、実在する会社、契約、案件ではありません。金額は比べません。
依頼者は、会社案内、事業案内、問い合わせページを含む六ページのホームページについて、二社へ見積もりを依頼したとします。
制作会社Aの見積書には、次の内容が書かれています。
- 一回の聞き取りをもとに原稿案を作り、依頼者の承認後に掲載する
- 掲載写真は依頼者が用意し、制作会社が掲載用に大きさを整える
- デザイン案は一案。構成承認前の修正は二回まで含む
- 六ページと問い合わせフォームを制作し、リンクと送受信を確認する
- 依頼者が契約するサーバーへ公開する
- 公開したサイトのファイルを引き渡す。公開後の更新は含まない
制作会社Bの見積書には、「六ページ制作一式」「デザイン・ページ制作」「問い合わせフォーム」「修正対応」「動作確認」「ドメイン・サーバー手配」「公開後サポート」と書かれています。原稿と写真の担当、修正の回数と条件、確認の対象、サポートの期間、契約名義、引き渡すものは記載されていません。
Bの見積書が悪いと決まったわけではありません。記載のない条件を確認していないため、まだAと比べられない状態です。
二つの見積書を、次のように写し替えます。
| 比較する仕事・条件 | 制作会社A | 制作会社B | 比較前に確認すること |
|---|---|---|---|
| 原稿を作る | 聞き取りから原稿案を作る | 記載なし | Bは原稿作成を含むか。依頼者が完成原稿を渡すのか |
| 写真を用意する | 依頼者が用意する | 記載なし | Bでは誰が写真を用意し、どこまで加工するか |
| デザイン案を出す | 一案 | 案数の記載なし | Bの案数と、案を決める時点 |
| 修正する | 構成承認前、二回まで | 「修正対応」 | Bの回数、対象、追加扱いへ変わる時点 |
| 問い合わせを確認する | 送受信を確認する | 「動作確認」 | Bは表示だけか、送信から受信までか |
| 公開する | 指定サーバーへ公開する | 「ドメイン・サーバー手配」 | Bの契約者、支払者、公開作業の範囲 |
| 公開後に対応する | 更新は含まない | 「公開後サポート」 | Bの対象作業、期間、回数、別料金の条件 |
| データを引き渡す | 公開サイトのファイル | 記載なし | Bで受け取れるもの、形式、時期、利用条件 |
この表で大切なのは、空欄を推測で埋めないことです。「修正対応」と書かれていても、回数や変更できる範囲を制作会社へ確認するまでは、「含む」と判断しません。
成果物と作業を、別の行にする
「六ページ」は成果物の量を示します。一方、聞き取り、原稿作成、写真加工、画面確認は、その成果物を作るための作業です。同じ六ページでも、依頼者が完成原稿を渡す場合と、制作会社が聞き取りから文章を作る場合では、依頼者と制作会社の仕事が違います。
比較表では、「会社案内ページ」の一行へすべてをまとめません。少なくとも、掲載内容を決める、原稿を書く、写真を用意する、画面を作る、内容を承認するという作業に分けます。
依頼者が行う作業も、空欄にしないでください。請求されない作業であっても、担当者と期限が決まらなければ制作は止まります。外注費と社内作業は、どちらも公開までに必要な条件です。
回数だけでなく、条件が変わる時点を見る
修正回数は、数字だけを比べても判断できません。同じ一回でも、文章の訂正だけを指すのか、ページ構成の変更まで含むのかで範囲が変わります。
先に確かめるのは、何を承認した後に変更扱いとなるかです。構成、デザイン、掲載内容の各段階について、依頼者が確認するもの、返答期限、含まれる修正、追加作業となる条件を一行ずつ書きます。
「何度でも修正できるか」だけを聞くと、完成条件が曖昧になります。どの段階で何を決め、決定後の変更をどう扱うかを確認する方が、日程と追加費用の条件を比べやすくなります。
公開後対応は、期間と仕事を分ける
「公開後サポート付き」は、対応内容が分からなければ比較項目になりません。操作方法の質問、文章の差し替え、仕組みの更新、障害の調査は、それぞれ別の仕事です。
比較表には、対応する仕事、受付方法、対象期間、回数や量、別料金へ変わる条件を書きます。公開直後の誤りを直す期間と、その後も続く保守契約も分けます。
サポートを含まない見積もりが、ただちに不利になるわけではありません。社内で更新を続けられるなら、必要な操作説明と引き渡しだけを依頼する方法もあります。外部へ任せるなら、公開後の作業を制作費とは別に比較します。
「所有」を一語で済ませず、名義と引き渡しに分ける
所有や引き渡しを確認するときは、「ホームページは自社のものになりますか」という一問で終えません。この聞き方では、ドメインの登録名義、サーバーの契約者、サイトのデータ、写真などの利用条件が混ざるからです。
比較表では、次の項目を別の行にします。
- ドメインの登録名義と、変更を承認する人
- サーバーの契約者、支払者、管理情報を保管する人
- 公開時と契約終了時に受け取れるデータ
- 文章、写真、画像、制作データを利用できる範囲
- 別の担当者へ移すときの作業、期限、費用
何を受け取れるか、どこまで利用できるかは、見積書の総額からは判断できません。見積書、提案書、契約書など、条件が記録される書面を確認します。個別の権利関係は、使用する素材と契約内容によって異なります。
金額を比べるのは、違いを説明できるようになってから
二社の条件を完全に同じにする必要はありません。原稿作成を含む案と、依頼者が原稿を用意する案を、意図して比べることもできます。その場合は、どの仕事が金額と社内作業の差になっているかを表に残します。
先にそろえるのは、成果物、作業、担当、回数と変更条件、公開後対応、名義と引き渡しです。その後で、初めに支払う費用、継続して支払う費用、追加費用が生じる条件を比べます。
まず、手元の見積書を一つ選び、「一式」と書かれた項目を作業ごとの行へ分けてください。各行へ「含む」「依頼者が行う」「含まない」「記載なし」のいずれかを書きます。「記載なし」が、制作会社へ先に確認する質問です。
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