リスティング広告の予算の上限は許容獲得費用から決める
公開日: 執筆:佐藤
リスティング広告の予算は、他社の月額ではなく、自社が一件の成果へ使える広告関連費から決めます。先に、何を成果と数えるか、一件にいくらまで使えるか、クリック後をどう計測するか、どこで止めるかを決めます。その結果を、広告関連費の総額上限へ落とし込みます。
この記事で扱うのは、検索結果に連動して表示される広告です。クリック数だけを成果とする運用や、料金相場は扱いません。業種や利益、問い合わせ後の成約率が違う事業を、同じ月額で比べても、自社の予算は決まらないからです。
広告の目的を、クリックより先に決める
広告の目的は、「ホームページへ人を集めること」ではありません。問い合わせ、予約、注文など、今回の広告で優先する行動を一つ決めます。複数の商品や目的を同時に試すと、どの広告費が何へ使われたか分かりにくくなります。
問い合わせを成果とするなら、有効な問い合わせの条件も決めます。営業地域外からの連絡、営業の売り込み、必要事項のない連絡まで同じ一件に数えると、件数は増えても判断を誤ります。受付時に判定できる条件へ絞り、広告担当者と問い合わせ対応者が同じ定義を使います。
広告費、クリック、問い合わせ、成約は、別の数字です。
| 段階 | 数えるもの | その数字だけでは分からないこと |
|---|---|---|
| 広告の配信 | 広告費、表示回数、クリック数 | 問い合わせや注文になったか |
| ウェブサイト上の行動 | 送信、予約、注文などの完了数 | 有効な相談や利益につながったか |
| 事業上の結果 | 有効な問い合わせ、成約、売上 | 売上から必要な費用を引いて利益が残ったか |
クリック率とコンバージョン率に関する説明では、クリック率が高い広告と、コンバージョン率が高い広告は同じとは限りません。クリックは、成果へ至る途中の数字です。
許容獲得費用を、事業の数字から出す
ここでは、一件の成果に使える広告関連費の上限を「許容獲得費用」と呼びます。広告媒体の推奨額ではなく、事業者が自社の収支から決める金額です。運用を外部へ依頼するなら、媒体へ支払う広告費だけでなく、運用作業の費用も含めます。社内で行う作業は、金額と分けて所要時間を記録します。
注文を成果とする場合は、一件の売上から、仕入れ、決済、配送、受注ごとに増える作業費を引きます。残った額のすべてを広告へ回さず、固定費と利益として残す額を先に決めます。そのあとで、広告へ使える上限を出します。
問い合わせを成果とする場合は、問い合わせのすべてが成約になるわけではありません。過去の記録があるなら、同じ期間と同じ「有効な問い合わせ」の定義で、問い合わせから成約へ至った割合を計算します。
問い合わせ一件の許容獲得費用 = 成約一件に使える広告関連費の上限 × 問い合わせから成約へ至る割合
次は、計算方法を示すための完全な仮例です。実在する事業の数値、広告料金、相場ではありません。
ある事業が、成約一件につき広告関連費へ使える上限を一万円と決めたとします。この仮例では、運用を社内で行い、外部へ支払う運用費はありません。過去の記録では、同じ条件の有効な問い合わせ四件から一件が成約していました。この場合、問い合わせ一件の許容獲得費用は二千五百円です。
この事業が、一か月に対応できる有効な問い合わせを八件までと決めるなら、一か月の広告関連費の上限は二万円です。
同じ期間の予算上限 = 一件の許容獲得費用 × 対応できる成果件数
この二万円は、八件の問い合わせを保証する金額ではありません。成果一件あたりの費用が許容額を超えたとき、同じ条件のまま広告関連費を増やさないための上限です。
過去の成約率がなければ、数字を作ってはいけません。失っても事業の継続に支障がない総額を仮の上限とし、最初の配信で有効な問い合わせと成約を記録します。記録が少ない間は、利益の予測ではなく、損失の上限として扱います。
クリック後を計測してから、広告を始める
広告を始める前に、成果を記録できる状態を作ります。問い合わせフォームなら送信完了、通信販売なら注文完了など、広告の目的に対応する行動を一つ決めます。設定後は、テスト送信やテスト注文を行い、完了が記録されるか確かめます。
AdWordsのコンバージョントラッキングに関する説明では、販売やサイト上で望む行動につながったキーワードと広告を確認できます。
電話や来店を成果とする場合は、ウェブ上の完了画面だけでは記録できません。受付時に広告経由かを尋ねる、広告用の連絡先を分けるなど、自社で継続できる記録方法を決めます。聞き取りで得た回答と、送信完了の計測値は、精度が違うため別に集計します。
媒体上の獲得費用は、同じ期間に媒体へ使った広告費を、同じ定義の成果数で割ります。
媒体上の獲得費用 = 媒体へ使った広告費 ÷ 成果数
運用を外部へ依頼した場合は、事業上の採算を判断するため、運用費を含む数字も別に計算します。
広告関連費全体の獲得費用 = (媒体へ使った広告費 + 運用費)÷ 成果数
成果がゼロなら、どちらの獲得費用もゼロ円ではなく、まだ計算できません。「費用を使ったが、測定できた成果はゼロ件」と記録します。
予算上限と、停止・見直し条件を同時に決める
予算だけを決めて、停止条件を決めないと、「もう少し続ければ成果が出るかもしれない」という理由で支出が延びます。配信前に、総額の上限、確認日、止める条件、止めたあとに調べる項目を書きます。
| 状況 | 判断 | 最初に確かめること |
|---|---|---|
| 成果の計測テストが通らない | 配信を始めない、または止める | 計測設定、フォームや注文の動作 |
| 成果がないまま総額の上限へ達した | 配信を止めて見直す | キーワード、広告文、広告から到達するページ |
| 成果はあるが広告関連費全体の獲得費用が許容額を超えた | 原因を見直し、許容額へ戻せる根拠がなければ止める | 成果の定義、有効率、成約率 |
| 問い合わせへ対応できる件数に達した | 新しい受付が可能になるまで止める | 返信、見積もり、受注の担当と時間 |
AdWordsの自動化ルールに関する説明には、コンバージョン単価が高いキーワードを止めることや、一定額を使ったキャンペーンを途中で止めることが例として掲載されています。自動化するかどうかにかかわらず、成果の費用と累計支出を分けて見る考え方は使えます。
少ない成果だけで、広告が成功したとも失敗したとも決められません。検索数や問い合わせの発生には変動があります。ただし、判断に十分な件数が集まるまで、上限なく使ってよいわけではありません。記録が少ない間ほど、決めた総額の中で試します。
運用を依頼しても、広告費と判断材料は分けて確認する
広告運用を外部へ依頼する場合は、広告媒体へ実際に使った費用と、運用作業の費用を分けます。表示回数、クリック数、成果数、媒体上の獲得費用、広告関連費全体の獲得費用は、同じ期間で受け取ります。成果の定義と計測方法も、自社で説明できる状態にします。
Googleは2010年、AdWordsを第三者へ任せる広告主が、実際の広告費、表示回数、クリック数を確認できるようにする方針を公表しました。運用を委託することと、数字を見ずに判断まで任せることは別です。
契約前には、広告アカウントの名義、自社から閲覧できる範囲、契約終了時に受け取れるデータも確認します。運用作業を委託することと、アカウントや計測データを自社で確認できなくすることは別です。名義や引き渡し条件は、媒体と契約によって異なるため、個別に書面で確かめます。
最初に作るのは、媒体別の月額表ではありません。一枚の紙へ、対象期間、成果の定義、一件の許容獲得費用、総額の上限、確認日、停止条件を書きます。一つでも空欄があれば、広告費を増やす前に、その空欄を決めてください。
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