リスティング広告のクリック単価は上限額と実際の支払額を分けて考える
公開日: 執筆:佐藤
上限クリック単価は、広告主が一回のクリックに支払ってよい最高額として入力する値です。実際のクリック単価は、その金額が毎回そのまま請求されるという意味ではありません。Google AdWordsでは、上限クリック単価と広告の品質がオークションに関係し、実際の支払額は上限より低くなることがあります。ただし、競争状況によっては上限まで達し得ます。
上限クリック単価を変える前に、その値を日予算や獲得単価と分けてください。上限クリック単価は一回のクリックに対する設定、日予算はキャンペーンの支出を管理する設定、獲得単価は問い合わせや注文など一件の獲得に要した広告費です。三つを同じ「広告に使える金額」として扱うと、変更の理由が曖昧になります。
ここでは、Google AdWordsの検索連動型広告を扱います。広告主が上限クリック単価を入力する入札を中心に説明し、別の入札機能には、上限の例外を示す範囲でだけ触れます。支払額の固定算式や、個別の入札機能の設定方法は扱いません。
最初に、五つの金額を分ける
クリック単価を確認するときは、同じ「CPC」という語を含む金額も分けます。上限クリック単価と平均クリック単価の説明は、前者を広告主が支払ってよい最高額、後者を複数のクリックで実際に支払った額の平均としています。
| 金額 | 何を表すか | その金額だけでは分からないこと |
|---|---|---|
| 上限クリック単価 | 広告主が一回のクリックに支払ってよい最高額として入力する値 | 毎回の実際の支払額、キャンペーン全体の支出、獲得単価 |
| 実際のクリック単価 | 一回のオークションを経て、クリックに対して実際に支払う額 | 次の検索でも同じ額になるか、問い合わせを獲得できたか |
| 平均クリック単価 | 対象期間の複数のクリックについて、実際の支払額をならした値 | 個々のクリックの支払額、最高額、獲得単価 |
| 日予算 | キャンペーンの支出を管理するための設定 | 一回のクリックに支払う額 |
| 獲得単価 | 問い合わせや注文など、一件の獲得に要した広告費 | 一回のクリックに支払った額 |
「平均クリック単価が上限より低いから、上限を高くしても安全だ」とは言えません。平均は、すでに発生した複数のクリックをならした値です。次の一回に支払ってよい金額を決める上限ではありません。
実際のクリック単価は、最高入札者の提示額をそのまま払う仕組みではない
検索連動型広告では、検索が行われるたびに広告がオークションへ参加します。AdWordsオークションの公式解説は、Google検索結果での実際のクリック単価に、上限クリック単価と品質スコアが関係すると説明しています。
このオークションは、もっとも高い金額を提示した広告主が、その提示額をそのまま支払う方式ではありません。同記事では、勝者が、掲載位置を保って下位の広告主を上回るために必要な最低限の額を支払うと説明しています。そのため、実際のクリック単価は、上限より低くなることが多いとされています。
広告の掲載には、金額だけでなく品質も関係します。Inside AdWords-Japanの品質スコアに関する説明は、入札単価と品質スコアの双方が高くなると、広告ランクも高くなるとしています。上限クリック単価だけを見ても、掲載位置や実際のクリック単価を再現できません。
ここから確認できる順序は、次のとおりです。
- 広告主が、上限クリック単価を入力する。
- 検索時のオークションで、入札単価と広告の品質が評価される。
- 広告ランクが、広告の掲載位置に関係する。
- クリックが発生した場合、オークションの結果に応じた額を支払う。
この順序は、支払額の固定算式ではありません。品質スコアの一点を一定額へ換算する方法や、入札単価と品質を固定割合で配分する方法は、Googleの公式資料に示されていません。
実際の支払額は、上限まで達することがある
上限クリック単価より低い支払額が続いていても、上限は飾りではありません。上限クリック単価の設定に関する説明は、実際のクリック単価が上限よりかなり低いことはある一方、競争が強く変化する状況では、クリックが設定した上限額に達し得ると注意しています。同記事は、一回のクリックに実際に支払える額を超えて、上限クリック単価を設定しないよう勧めています。
完全な仮例で考えます。ある広告担当者が、最近の平均クリック単価は低いからという理由で、実際には支払いたくない額まで上限を引き上げたとします。その後、競争状況が変わり、一部のクリックが上限まで達しました。過去の平均が低かったという記録は、次のクリックの支払額を守る上限にはなりません。
これは、上限クリック単価を低くすればよいという話でもありません。低い上限では、広告が競争に参加できる範囲が変わり得ます。事業責任者が一回のクリックに許容する額と、運用担当者が掲載機会のために必要だと考える額を分け、引き上げる理由を記録します。
入札設定が違えば、「上限」の扱いも違う
AdWordsには、動きの異なる入札設定もあります。Googleの2010年8月16日の公式記事は、コンバージョン履歴に応じて、入力した上限クリック単価をオークションごとに調整する別の機能を公表しています。その機能では、条件によって入力値を上回る入札もあります。
したがって、「入力した上限より実際のクリック単価は高くならない」と、すべての入札設定について断定してはいけません。この記事の説明を使う前に、対象キャンペーンの入札設定を確認します。この別機能の設定方法は扱いません。
日予算は、一回のクリックの価格ではない
上限クリック単価は一回のクリックに対する設定です。日予算は、キャンペーンの支出を管理する別の設定です。日予算を高くしても、個々のクリックへ支払ってよい最高額を決めたことにはなりません。上限クリック単価を高くしても、期間全体で使ってよい広告費を決めたことにはなりません。
キャンペーンの月間請求上限に関する説明は、日予算を基に上限を定める仕組みを説明し、実際の日ごとの支出は変動し得るとしています。日予算と、その日の実際の支出が必ず一致するとは限りません。
一回のクリックに許容する額と、期間内に許容する広告費は、別々に承認します。月や日の予算上限と停止・見直し条件を決める方法は、予算の記事で扱います。本稿では、期間予算の算定を繰り返しません。
獲得単価は、クリック後の結果を含む
クリック単価が示すのは、広告をクリックしてもらうための費用です。獲得単価は、問い合わせや注文など、一件の獲得に要した広告費を示します。両者を比べるには、クリック後の行動を計測し、何を一件の獲得と数えるか決める必要があります。
平均クリック単価と平均獲得単価の説明は、クリック単価が上がっても、コンバージョン率との関係によって獲得単価が下がる場合を示しています。反対に、クリック単価が低くても、問い合わせや注文につながらなければ、獲得単価も低いとは判断できません。
本稿で決めるのは、一回のクリックに対する上限と、実際の支払額をどう分けるかです。許容獲得費用から予算を決める方法は5月1日稿、クリック後の行動を計測する方法は6月13日稿へ分けます。
問いごとに、確認する数字を変える
入札額を変更する前に、いま解こうとしている問いを一つ選びます。
| 問い | 最初に確認するもの | 本稿との境界 |
|---|---|---|
| 一回のクリックへ、いくらまで支払うか | 入札設定、上限クリック単価 | 本稿で決める |
| なぜ実際のクリック単価が上限と違うか | 上限クリック単価、品質、競争状況、平均クリック単価 | 本稿で仕組みを確認する |
| 広告の掲載や位置を見直したい | 入札単価、品質スコア、広告ランク | 6月19日の品質スコア稿で原因を分ける |
| 一日や一か月に、いくらまで使うか | 日予算、期間予算、停止条件 | 5月1日の予算稿で決める |
| 問い合わせなど一件に、いくら使ったか | コンバージョン、広告費、獲得単価 | 6月13日の計測稿と照合する |
平均クリック単価だけを見て上限を変えると、掲載、予算、獲得のどの問題を直したのか分からなくなります。問いと数字を対応させてから、一項目だけ変更します。
上限を決める人と、変更する人を分ける
小規模な事業では、一人が複数の役割を持っても構いません。ただし、どの立場で判断したかは分けて記録します。
| 役割 | 責任 |
|---|---|
| 事業責任者 | 一回のクリックに許容する額と、広告で獲得したい行動を決める |
| 運用担当者 | 入札設定、上限クリック単価、平均クリック単価、品質スコア、変更理由を確認する |
| 確認・承認者 | 上限クリック単価と日予算を別の設定として承認し、変更対象を確定する |
| アカウント管理者 | 事業者が設定値と変更履歴を確認できる権限、担当変更時の引き継ぎ経路を保つ |
運用作業を外部へ委託する場合も、上限クリック単価を変更した事実だけでなく、変更前の値、変更理由、対象、承認者を確認します。アカウントの権限や変更履歴を誰が保持するかは、実際の契約と設定で確かめてください。
最初の一手は、対象キーワードを一つ選び、入札設定、上限クリック単価、同じ期間の平均クリック単価、日予算、変更理由を別の欄へ書くことです。獲得単価を確認できるなら、同じ期間のコンバージョン定義とともに別欄へ置きます。どの問いへ答える変更か説明できるまで、上限クリック単価を動かさないでください。
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